2024.11.12
「物流業は人が足りていない」と言われてもう何年経つでしょうか?
2030年にはドライバーが約21万人不足するという予測もされているくらい、確かにこの業界では人材不足が顕著となってきています。
最近ではドライバーが確保できずに倒産してしまう運送会社も増えてきており、
外国人採用を積極的に行っており、比較的人材が集まりやすいチャーターズにおいても、対岸の火事とは言えない状況になってきています。
ただ、人材不足を嘆いてばかりいても建設的な議論はできないままなので、
どうして人材不足に陥っているのかを、今回は『運送会社内部の事情から考える人材不足問題』と称して
運送会社側にも原因があるのではないかということを考え、それに対しての打開策も少しだけ検討してみたいと思います。
① 足りていないのはドライバーなのか? 管理職なのか?
弊社では現在14社のグループ運送会社を保有しています。
毎月の会議などで、多くのグループ会社の担当者から「人手が足りません」という相談をよく受けます。
非稼働のトラックが多く、ドライバーが足らないということであれば話はまだシンプルで、ドライバーを採用すればいいだけ。
ただそうした話の前後にはかなりの確率で「ちなみに管理者が目の前の仕事にかかりっきりで、採用しても教育できない」「毎日やることが多くてそもそも管理職が足りていない」という話も上がってきます。
ということは、運送会社では「管理者が足りないからドライバーが入れられない」のでしょうか?
それとも「ドライバーが入ってこないから、管理職が大変になっている」ということなのでしょうか?
これまでの経験上、業務が回っているのに管理者側から「管理職が足りていない」という発言がでることに関しては、少なからず管理者側の甘えがあります。言い換えれば、「これだけ苦労していることをわかってほしい」「別の人じゃ自分みたいにはできないだろう」という気持ちの表れもあるかと思います。
もちろんチャーターズ含めグループの管理者全員が目いっぱい仕事してくれていることは分かるのですが、「自分の仕事をもっとシンプルにしよう」「もっと楽にできる方法を考えてみよう」と考え行動している管理職が少ないことも事実です。
そのため、昔から変わらない方法での管理方式になってしまっており、自分自身をアップデートすることをあきらめてしまっている。結果的に負担は変わっていなくても、負担が大きくなっていくと考えてしまう傾向にあります。
こうした管理職側のスタンスや受け入れ態勢は当然、ドライバー採用や定着にも影響をしてきます。
運よく採用できたとしても特に入社したてのドライバーさんについては、管理者が日頃の業務に忙殺されていてフォローがおざなりになると「放置されている」と感じる傾向があります。中にはそれでもいいというドライバーさんもいますが、ここ最近はそうした管理者とのつながりを重視するドライバーさんも多く、ただでさえ1人で運転しているときは誰とも話さないのに、事務所に帰ってもほとんど誰とも会話せずに帰るだけの生活、というのを寂しく思い、別の会社に移るドライバーさんもいるように思います。
結局のところ「タマゴが先か?ニワトリが先か?議論」になってしまうのですが、中小の運送会社で管理者を余力を持って
おいておける会社も少ないので、堂々巡りのまま、結果的に人手不足を解消できずに終わっているところが多いように感じます。
② トラックドライバーは未経験からでは無理という先入観
昨今のグループ各社での採用に対しての応募状況を見ると、「未経験なのですが免許を取ったので面接してもらえませんか?」というお問合せをいただくことも多くなってきています。
特に都市エリアでは「これまでサラリーマンをしていたのですが、一念発起して大型免許を取りました」や「教師をしていたのですが、転職してあこがれだったトラックドライバーになりたいと思っています」など他業界から、物流業界へ転職したいという方も多く、そのたびにこの業界もまだまだ可能性あるなと感じることもあるのですが、そうした応募に対しての運送会社側の考え方や行動にも業界の人材不足を増長する原因があるよ萬うに感じています。
つまり、「未経験だとウチではやれる仕事はありませんよ」や「未経験ならまずは2トン車に乗って何年か運行してもらいます、そのときの給与は総額で24万円です」という回答をしてお断りをしている会社さんが非常に多い気がします。
もちろん、運送業の中にも重量物や危険物を輸送する仕事や、運転以外にも別の技能が必要となる仕事も多く、素人が運転できるからといっていきなり来てやることは困難である仕事も多いのですが、会社として育てることを放棄している時点で、人材不足スパイラルからはもう抜け出せない状況に陥ってしまっているんだと思います。
自社の人材不足を言い訳にしつつ「大手さんは人材がたくさんいていいですよね」とついつい思ってしまう。
でも考えてみると、大手企業も新卒の何も分からない人たちを0から育てていくという気持ちでやっているからこそ、多くの人材に恵まれているだけだと思います。
「いやいや、大手だから0から育てられる余裕があるんでしょ?」という反論もあるかもしれませんが、これもまた逆だと思うんです。
つまり「最初は無理をして人を育てるということを実施し続けてきたから、今大手になっている」のではないでしょうか?
チャーターズで日系ブラジル人のドライバーが多い理由もここにあります。
ウチの専務は外国人かつ未経験者であっても、その人柄を見て、採用を行っています。
そうして採用されたドライバーさんについては、どうしても交通ルールの理解が不十分であったり経験不足ということもあって、事故率が高くなってしまう傾向にはあるのですが、こうしたことを乗り越えられるよう指導していくことが物流業界の可能性を広げ、これから先も日本の物流を支えていくための会社としての社会的責任であるとも考えています。(それでも教育が足らずにご迷惑をおかけしてしまい、クレームなどを頂くことも多くあり、こちらはカイゼンしていく必要があると考えております。)
そういう意味では、未経験者でもこの業界に興味がある方の門戸を広げておく運送会社側のスタンスも重要なのではないかと常々考えています。
免許制度が細分化されたこともルート配送やラストワンマイルの業界ではいいかもしれませんが、実は大型車業界への門戸は大幅に狭められたと考えています。そんな中で弊社グループような会社で未経験から、4トン車や大型車、トレーラーのドライバーになりたいという方は本当に貴重な存在です。
いすゞさんがELFmioという普通免許で運転のできる2トン車を開発してくれたことで、物流業界全体で興味のある方への敷居を低くする取り組みを行ってくれていますが、そのためには運送会社自身もこれまでの先入観を捨てて、チャレンジしていく姿勢が必要なのだと感じています。
我々運送会社は、常にこの国の経済の中心で重要な役割を担い、人々の生活に寄与しつづけられるよう会社自体も進化していかなくてはいけません。そのためには、一緒に働いてくれる仲間の存在が何よりも大切ですし、チャーターズとしてもそのためにやり方を変えていきながら存続しつづけられるよう人材不足の問題に会社の内側から取り組んでいきたいと考えています。