2022.4.11
数年前から運送会社での業務効率化を目的としたDX化を推進する声が増えています。
旧態依然とした考え方からなかなか抜け出すことのできない運送業界で、
日々の入力や配車の効率化を考えて、多くの会社が物流業界での業務効率化を考えています。
実際に、チャーターズにも毎日のようにさまざまな営業電話やメールが入ってきて、
「普段の業務をDX化しませんか?」「繰り返しの作業を自動化してみませんか?」などという提案があったりします。
ですが、そうした多くの開発会社さんなどは苦戦されていることでしょう。
なぜなら、運送会社側は、別にDX化を求めているわけではないからです。
ましてや、そもそもDXって何?という感じで、それがどんなことを意味するかも理解していないことが往々にしてあったりします。
「DXを提案したい開発会社」と「日々の業務で手一杯の運送会社」の間では、
必要性の差やITリテラシーの差がかなりあるにも関わらず、それを無視した一方的な
「DX化しませんか?」という提案に、ただただ辟易してしまっているのが実情です。
楠木健さんの『逆・タイムマシン経営論』で論じられていた「飛び道具トラップ」とでも
言わんばかりに、何かあればDX、DXとその用語だけが独り歩きしているような現状に陥っています。
では上述した理由以外で、何が原因で運送会社にとって新しいシステムなどの導入が難しいのでしょうか?
提案側が陥っている誤謬を以下列挙していきます;
1,運送業を一括りに考えすぎ
これまでにいろいろなシステム開発会社さんなどと話をしてきた中で、これは必ず勘違いされている考え方です。
一般貨物を行っている会社は基本的に一般貨物だろうが、自動車部品だろうが、海上コンテナだろうが、
はたまたルート配送だろうが、運送会社側が同じ悩みを持っていると考えがちだったりします。
ここは声を大にして伝えたいことですが、運送業は運ぶものによって、勝手が異なります!
自動車部品を運ぶ会社と、建築資材を運ぶ会社ではその方法がさまざまな面で違うこということは、
業界外からでは分からないと思うので仕方ないことなのですが、時に別業種だと思っていただいた方がよかったりします。
2,運送会社側の事務方を過大評価しがち
よく提案にあるのが、
「導入するまでは少し大変ですが、導入してしまえばあとは管理者の方や配車の方はかなり楽になります。」というもの。
おっしゃることはわかるんですけど、その「導入してしまえば」が限りなくハードルが高かったりします。
よくヒヤリングなどで、配車管理はどのようにされていますか?と聞かれることがあり、
「うちは大体、紙かホワイトボードですね」と答えると、「まだそんなにアナログなんですか?」と突っ込まれることがあります。
まあ自分たちで認めるのは辛いところではあるんですけど、運送会社ってそんなレベルなんです。
パソコンをバリバリに使いこなして、EXCELのショートカットや関数などもなんでも使えてっていう人がどれだけいるのか・・・。
あとは正直紙やホワイトボードに手書きをしていた方が、急な修正にもすぐに対応ができるということもあるんですけど、いちいちEXCELなどに打ち込んでいったりするのは、逆にミスが起こりやすくなったりもするため、そこをデータ化というのは結果としてそれほど求めていない、という結論になったりすることがあります。
3,「良いサービスだから絶対に使ってくれる!」と考えがち
これは物流系のシステムに限らず、他のものにも当てはまることかもしれませんが、
絶対に便利になるシステムだから使ってもらえるだろう、と考えることにはやはり落とし穴がありそうです。
特に物流マッチングは、考え方としては空いている車やスペースの情報を共有することで、
荷主にとっても、運送会社側にとっても 便利でいいサービスが提供できるということは理解できるのですが、
実際に、それを入力する運送会社側であったり、荷物情報を入力する荷主側でスムーズにやり取りができないと
使い始めてもすぐに「使い物にならない」という判断をされてしまわれがちです。
また同じようなマッチングサービスはWebキットやトラボックス、ハコベルなど様々あり、
ユーザー側がそれぞれ細かく見なければならない煩雑性があったりします。
かといって、新しいサービスの場合、荷主側も運送会社側も頭数が揃っていないため、
結局のところ、情報が上がってきても、それに対応する仕事であったり、車情報がないという時間が発生します。
こうした問題は、結局のところ大手運送会社に情報共有で依存などをしなければいけないため、
なかなかベンチャーとして始めるにはとっかかりが難しいという状況に陥ります。
ルート最適化などについても同じで、郵便輸送や宅配便、コンビニ等のルート配送については、
AIが自動的にルートを効率化することで成果も出てきているようですが、ポイントとポイントを単純に結ぶことが多い
一般貨物などではルートの最適化をそれほどする必要性もないことが理由で、多くの運送会社では使い道がないものとなっています。
※運送業全体でもルート配送をやっているところなどはそれほど多くなく、大多数がスポット便だったりするため。
こうした理由から、なかなか運送業では業務のデジタル化は進まなかったり、
画期的なサービスでも大々的に広まったりすることはない、ということが分かるかと思います。
運送業ではデジタル化はなかなか進んでいないのが現状ですが、
中には中小の運送会社でも積極的に「DX化」を進めているところがあったりします。
そうした会社さんの特徴はズバリ「いかに社長が旗を振って進めているか?」につきるかと思います。
結局のところ、95%以上の運送会社では社長の意気込みや考え方だけで、物事が進む体制になっているといっても
過言ではないため、社長がどう考えるか?で成功するも失敗するも決まってしまうという結論です。
チャーターズでも傍から見れば、非効率という業務はまだまだ多いのが実状ではあるため、
本当に必要のある部分から、何かしら着手はしていけたら、いいな~と漠然に思っています。